美しすぎるレコードジャケットの世界。

レコードのジャケットアートというのはアートでありながら実に商業的、実用的。グラフィックを作る人にとって絶好のフィールドだと思います。最近は私も完全にApple Musicユーザーになってしまったため、ショップでレコードを買うこともジャケットを手にすることもほとんどなくなりましたが、なんとなく手元に残している何枚かのアルバムはやはりジャケットアートが気に入っているものが多く、たまにデスクに並べたりして楽しんでいます。ということで今回は特に美しいと感じるジャケットアートをいくつか紹介したいと思います。尚、ジャケットアートの写真やグラフィックを誰が手掛けたかは実はよく知りませんし、調べてもいません。先入観なしにいいなあと思えるものを気まぐれに取り上げます。最初はキース・ジャレットの「メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー」

アウトフォーカスでモノクローム、最高です。写っているものは花と窓ぐらいしかわかりませんが、寝起きの風景のようなアンニュイなトーン。左上の写真が完全にブラックになっている面に白い小さなゴシック体でタイトル。お手本のような見事なバランスだと思います。次はジム・ホール & ロン・カータの「アローン・トゥゲザー」

絶妙な角度で俯瞰された画面上に迷路の立体模型。よく見えないかもしれませんがその中に2つの人型のオブジェが配置されています。迷路の中でもうすぐ出会うようにも、別れて離れていくようにも見えます。二人の巨匠、ギタリストとベーシストのデュオ作品にふさわしい素晴らしいアイデアだと思います。まさにジャズのインタープレイ。アドリブでフレーズを重ね合ったりはずしたり、最後のテーマでまたぴったり揃ったり。1972年のアルバムなので時代的にCGではなくペインティングもしくは、実際に模型を作り写真撮影したものと思われますが、構図や色合いなど完ぺきな美しさです。続いてかなり有名なアルバム、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」

おそらくデビーの横顔のシルエットなのでしょうが、不思議な多重性があって、別の色々な物体にも見えてきます。さらにユニークなのが色の構成です。どっしりとした黒地に幻想的な映画のような紫色、その中に例のシルエットがまた重く黒く。そしてその頭部の中央に突然のオレンジ色でタイトル。セリフ体も美しい。収録されている演奏もさることながらジャケットアートも含めて傑作アルバムの筆頭だと思います。次は一気に最近の作品で、若手人気ジャズギタリストジュリアン・ラージの「ラヴ・ハーツ」

遠目に見ると鍵盤?音符?よく見るとマッチ棒の燃えさしがきれいに並べられている写真です。マッチ棒が一本一本長さも燃え方もバラバラでその間隔や角度も不均等でありながら、ちょうどよい整列感。またジャケット下半分がマッチで埋められているのと対象的に上半分はアイボリー地の余白で最上部に幅が広めで独特のセリフを持つフォントでタイトル。マッチ棒のような身近でさりげない素材、アナログでランダム性のある素材をレイアウトの妙で作品化するという、個人的に大好きな手法です。紙ジャケット版のCDが手元にありますが、かっこいいので不必要に見えるところにおいておきたくなります。最後はキャノンボール・アダレイの名盤「サムシン・エルス」

少し系統が変わってタイポグラフィ系です。ジャズ、特にハードバップ系のアルバムはユニークでインパクトのあるタイポグラフィをフィーチャーしたデザインが非常に多いのですが、その中ではいたってシンプルな作品です。しかしシンプルだからこその上品な美しさ。ハイセンスなインパクト。縦長の文字ボックス感、白、緑、青、の絶妙なカラースキーム。マイルス・デイヴィス以下参加メンバーの姓と名の隙間を斜めに整えた文字間レイアウト。真似をするのは案外簡単かもしれませんがこれを最初に作った人には本当に脱帽します。

以上、今回はジャズ篇という感じになりましたが、またの機会にロックやテクノなど他のジャンルのジャケットアートについても紹介してみたいと思います。